Minecraftマルチ向けレンタルサーバ比較
2021/1/22 23:59
フレンドや自分の子供と同じサーバで遊ぶためのMinecraftマルチサーバについて、クラウドを含めたレンタルサーバ/VPSの金額面での比較を記載する。次のエントリで、Dockerを利用した再構築しやすくバージョンアップ対応も楽なマルチサーバの作成方法を記載する。
JKがテック職の父親からレクチャーを受けて、友達と遊ぶ用のMinecraftサーバをローカルからVPSに移行する話が、Twitterで話題になっていたのを見た。
自分も10年近くプライベートなマルチサーバを作って遊んでいるので、需要があるのかと思い、備忘録がてら記載する。
目次
マルチ向けレンタルサーバの比較
比較条件
2021年1月現在の1時間あたりの金額を元に比較する。サービスが月額料金のみの記載である場合は、一月を30日と換算して計算する。米国ドル建ての場合、1ドル110円で計算する。
比較に当たっては、以下のスペックを満たすプランを選択する。遊び方にもよるが、サバイバルで遊ぶ分には10人程度は問題なく収容できるスペックと考えている。
また、この時点ではMinecraftサーバをDocker上に建てることは考慮しない。
- 2コア以上のvCPU
- 4GB以上のメモリ
- 30GB以上のSSD
- 長期利用割引が利用可能である
- WindowsServerは除外する
- データセンターが国内にある
なお、「自宅にサーバを立てるのが一番安いのでは」という意見もあるかと思う。経験からするとこれはお勧めできない。Zeonを載せたDellの安いサーバやRaspberry Piで自宅サーバを立てたことがあるが、Zeonは暖房器具のごとき排熱と月1万を超える電気代、Raspberry Piは小型高回転のファンの金切り声が問題となる。マジやめとけ。
結果サマリ
サービス | Region /プラン名 | サーバスペック | 通常 料金 | 長期割引 (3年) |
---|---|---|---|---|
AWS | ap-northeast-1 | t3.medium Limited (2vCPU/4GB MEM/30GB SSD) | 約7円/h | 約3円/h |
Azure | 東日本 | B2S + Managed Disk E4 (2vCPU/4GB MEM/32GB SSD) | 約7円/h | 約3円/h |
GCP | Tokyo | e2-custom-2-4096 regular + Persistent Disk Zonal SSD (2vCPU/4GB MEM/30GB SSD) | 約18円/h | 約9円/h |
ConoHa | 4GBプラン | 4vCPU/4GB MEM/100GB SSD | 約6円/h | 約4円/h |
さくらのVPS | 4GBプラン (石狩) | 4vCPU/4GB MEM/200GB SSD | 約5円/h | 約4円/h |
コア当たりの性能差は考慮しない。各社公開していないため。
国内に他にもVPSサービスはあるが、代表的な二つを選択した。
だいたい、4円/h=2880円/月、3円/h=2160円/月の計算になる。なお、長期割引プランの内容は各社違うためこの金額は実際に課金される金額とはイコールではなく、この表は計算上のものである。これは各社ごとに後述する。
評価
料金について。
通常料金で見たとき一番安いのはさくらのVPSである。
3年の長期割引を適用すると一番はAWSで、小数点以下の差で次点がAzureになる。
GCPはどちらも高いうえに、グローバルIP取得が無料ではない。
ConoHaとさくらのVPSはストレージが大きいのが目立ち、コストを悪化させているようにも見える。
導入しやすさについて。
AWS、Azure、GCPはIaaSなので、基本的にはSSHで乗り込んでコンソールでMinecraftサーバを構築する必要がある。
ConoHaとさくらのVPSはMinecraftサーバの初期構築をGUIから簡単にできるようにしている点にアドバンテージがある。しかし、server.propertiesの編集やMod導入をする際には結局AWSやAzureなどと同じようにコンソールを触る必要があるため、あまりメリットを感じない。また、GUIからMinecraftサーバの初期構築をする場合は公式のMinecraftサーバの導入となる。SpigotなどのMod導入を前提としたMinecraftサーバを導入したい場合はAWSやAzureなどと同様、CUI作業となる。
総評としては、Linux触れるならAWSかAzure、自由度を犠牲にして簡単さを選ぶならConoHaというところか。再起動でMinecraftを自動アップデートしてしまうさくらのVPSは困る。自動アップデートはスクリプトを呼んでいるだけと思われるのでrcあたりから外せば自動アップデートOFFで使えると思われるが、CUI作業である。
AWS詳細
2021年1月現在、t3.meduimよりもコストパフォーマンスの高いインスタンスタイプは存在するが、なぜこれかというと我が家で現在利用しているからである。実績として、RI購入費用が$615で、毎月の課金額が$5程度である。
長期割引プランは一番割引率の高いReserved Instanceで、全額前払いで購入した場合の金額である。先に支払うことで以降の月額料金にサーバ計算機料は含まれなくなる(ストレージ使用料・NW利用料はかかるため、0円にはならない)。
長所
- 安い(t3よりも新しいタイプを選ぶとさらに安くなる可能性がある)
- 機能が豊富だが、それらをほぼ無料で使える(特に監視、請求アラート、FW)
- IaaSなので圧倒的に自由
短所
- バーストが切れると処理速度に不安が出る(プレイに当たっては問題ないレベル)
- AWSのインフラ知識が必要
- LinuxでMinecraftサーバを立てられるだけの知識が必要
正直、AWSのデプロイ手順やLinuxの構築手順は世の中にあふれているので『知識が必要』といっても、ググる力があれば何とかなると思われる。
Azure詳細
机上計算である。PaaSしか使ったことがないのでNWやセキュリティ周りで考慮漏れがあるかもしれないことを断っておく。
基本的にはAWSと同じ金額で同じメリットを享受できると思われる。ただし、ストレージの料金計算が、容量に対する課金と、ディスクIOに対する課金でわかれており、見積もりがしにくい。今回はトランザクションユニットを100として計算した。
長期割引プランは一番割引率の高い3年前払いで、先に支払うことで月額料金にサーバ計算機料が含まれなくなる(ストレージ使用料・NW利用料はかかるため、0円にはならない)。
長所
- 安い
- 機能が豊富だが、それらをほぼ無料で使える
- IaaSなので圧倒的に自由
短所
- ストレージ周りの料金計算が面倒
- Azureのインフラ知識が必要
- LinuxでMinecraftサーバを立てられるだけの知識が必要
GCP詳細
机上計算。IaaS売る気ないな?っていうレベルで高い。グローバルIPも追加料金になっているため「PaaS使え」という強い意志を感じる。使ったことがないので考慮漏れがある可能性があることを断っておく。
料金を置いておくと、その他はAWS・Azureと変わらない。他と違うところは、超高速なローカルSSDが結構な容量ついてくるので、サーバを絶対再起動しないマッチョな運用をするならアリなのかもしれない。お勧めしないが。
長期割引プランは、3年前払いではなく3年縛りである。3年間絶対使い続ける必要がある。3年縛りによって毎月の月額料金が割引されるが、この割引は計算機料だけでなくストレージ料金にも適用される。
長所
- IaaSなので圧倒的に自由
短所
- 高い
ConoHa詳細
机上計算。VPSなのでスペック選択の自由度が低く、最低限のスペックを選んで費用を低減することが難しい。使ったことがないので考慮漏れが(以下略
OpenStackベースの基盤だそうだが、AWSやAzureと比べて安定性や性能で同等かといわれるとそうではないので、外部から基盤の状況を監視した方が良いと思われる。
先に書いたが、Webの管理画面でMinecraftサーバの初期構築とバージョンアップが行える。サーバはMinecraft公式のJava版もしくはBE版が導入できる。ただし、バージョンの指定やロールバックはできない。また、server.properties編集やMod導入をしたいならCUI作業となる。
Linux知識無しで初期構築やバージョンアップができるのはメリットだが、自由度が下がるのと、バージョンアップでブロックの互換性無くなったら古いワールドはどうなるのかが気になるところ。
長期割引プランは3年縛りである。
長所
- Webコンソールで簡単にMinecraftサーバをたてられる(マニュアルもある)
- バージョンアップがワンクリックでできる
短所
- 高い
- 公式MinecraftサーバかつカスタマイズはCUIであるため、わざわざ自分で独自にたてるメリットが薄い(公式は激重らしいが)
- 任意のバージョンを選べない
- 初回立ち上げ時には公開鍵認証に対応していない
さくらのVPS
机上計算。VPSなのでスペック選択の自由度が低く、最低限のスペックを選んで費用を低減することが難しい。長期割引を使わず、通常料金で使おうとした場合は一番安い。ディスクが200GBもあるので、Minecraftサーバのほかにも何かに使うならアリなのかもしれない。使ったことがないので考慮漏れが(以下略
Minecraftサーバの初期構築用スクリプトが公開されている。こちらも公式Minecraftサーバが対象であるため、デメリットはConoHaと同様。
また、サーバ再起動時に自動的にバージョンアップされるというありがた迷惑な機能がついている。
長期割引プランは年間一括払いがある。
長所
- 通常料金であれば一番安い
- Webコンソールで簡単にMinecraftサーバをたてられる(マニュアルもある)
短所
- 高い
- 公式MinecraftサーバかつカスタマイズはCUIであるため、わざわざ自分で独自にたてるメリットが薄い(公式は激重らしいが)
- 任意のバージョンを選べない
- 再起動するとMinecraftが自動的にアップデートされてしまう